Messageメッセージ

社会保険労務士 大塩

「人事戦略とは即ち経営戦略である。」

HRM(Human Resource Management : 人的資源管理)という言葉を頻繁に耳にするようになりました。古くから言われる、経営は「ヒト・モノ・カネ・情報」の「ヒト」の部分。モノ・カネ・情報を操り、訓練や教育で価値を高めることができる「ヒト」の重要さについては、どのような経営者でも理解し、描いた未来へ向け社内の人的資源の有効活用をしたいと考えていることでしょう。

ある一定規模の会社であれば人事部があり、採用・人事評価制度の構築・労務管理・能力開発・モチベーション管理など、資産としてのヒトにスポットを当て、その価値を上げながら適切に運用する施策がとられます。 しかしながら、中小企業においては、人事部はおろか専門の人事担当を置ける会社も少なく、重要でありながら「ヒト」という資産の手入れや価値の向上が適切に行えていないように思います。 離職率の高い会社、ヒトが育たない会社、月の残業が160時間を超えるような会社、果ては労働トラブルにまで至り労働基準監督署の監査が入る会社など、私は様々な会社を見てきました。 しかしながら、どの会社の経営者も、その環境を作りたくて作っているわけではなく、時間的または金銭的な制約により適切な人事が行えず、結果として労使ともに望まない環境ができあがっていたように思います。 経営者側としては社員の生産性の低さに憤り、従業員としては待遇に不満を感じる。これは互いに不幸でしかありません。

また、投資対象としてみれば「ヒト」とはハイリスク・ハイリターンの投資と言えるかもしれません。 投資が成功すれば莫大な利益を生み出す優良資産となり、失敗すれば年数百万の損失が出る不良資産ともなり得ます。 投資を成功させるために適切な運用が必要ですが、日々の教育やメンタルケアはリターンが得られるまでに膨大な時間がかかる上に、離職によってそれまでの投資が無に帰すことになるため、手間がかかる上に運用が難しいというのもまた事実です。 さらに労働基準法で解雇が制限されていることから損切りが難しいというのもこの投資の特徴です。 だからこそ、採用が重要であり、不良資産を優良資産へと変えていく教育が重要なのです。

私はコンサルタントとして、10年以上様々な規模や業種の企業と向き合う中で、その実力が発揮されたときの「ヒト」の持つパワーの大きさに驚嘆するとともに、その実力が発揮できない環境の多さにもどかしさを感じています。従業員を顧客と同様に捉えて働きやすことを整えることで、生産性を上げるとともに企業への帰属意識を高めていくインターナル・マーケティングの重要性を理解し、ES(従業員満足)を高めることが、CS(顧客満足)に繋がり、最終的に企業利益に還元されるSPC(Service Profit Chain)の考え方に基づいた人事戦略はまだまだ浸透しておらず、制度の設計や実施に自信がない企業が多いというのが実感です。

もしHRMの重要さを理解しつつも、採るべき最適化の方法に悩んでいるようでしたら、一度ご相談いただけたらと思います。

経営者と労働者の双方が幸せに働ける未来のために。

GMP社会保険労務士事務所
代表 大塩裕史